本場大島紬

 

糸1本1本に込められた伝統と誇り ― 本場大島紬の世界へ

日本全国に数ある織物の中でも、その名を世界に知らしめる「本場大島紬(ほんばおおしまつむぎ)」。鹿児島県の奄美大島、そして南九州市などの本土地域で受け継がれてきたこの織物は、約1300年の歴史を持つ日本有数の伝統工芸です。

本場大島紬の最大の特徴は、なんといっても「先染め」と「締機(しめばた)」によって生み出される緻密な絣(かすり)模様。絹糸を植物染料で一度染めた後、あらかじめ模様を設計し、その部分だけを織らないように縛って再び染める「締加工」を施します。この作業を数回繰り返すことで、1反の反物に数十万もの織り込み点が生まれ、まるで緻密な絵画のような模様が浮かび上がります。

使用される染料のひとつが、奄美特有の「テーチ木(車輪梅)」という植物から抽出される赤褐色の色素と、泥田の鉄分を使った「泥染(どろぞめ)」です。自然の力だけで繊維を染め上げるこの工程は、まさに職人の感覚と経験が頼りの伝統技術。化学染料では再現できない深みのある黒褐色は、大島紬ならではの品格を漂わせます。

もうひとつの魅力は、その軽さと着心地。しなやかな絹糸で織られた生地は、見た目以上に軽く、肌にしっとりとなじむ感覚はまさに「第二の皮膚」とも言われるほど。通気性も高く、長時間着ていても疲れにくいことから、格式ある場はもちろん、日常の装いにも適しています。

かつては「一反仕上げるのに半年以上かかる」とも言われた大島紬。その希少性と芸術性の高さから、「世界三大織物」のひとつとも称されています。2023年には、鹿児島市に「本場大島紬ミュージアム」もオープンし、見学・体験型の展示を通して、観光客にもその魅力をより身近に感じられる機会が広がっています。

また、現在では若手クリエイターとのコラボレーションも進み、バッグやストール、名刺入れなどの小物にも大島紬の布地が使われるなど、ライフスタイルに溶け込む新しい展開も注目されています。伝統と革新を融合させながら、次世代に受け継がれる工芸として進化を続けているのです。

鹿児島旅行の記念に、自分へのご褒美に、大切な人への贈り物に――。本場大島紬に触れることは、ただ“物を買う”のではなく、“技と文化をまとう”という体験です。

糸の一本一本に込められた職人たちの技と想いを、ぜひ鹿児島で感じてみてください。

基本情報

住所
鹿児島県大島郡龍郷町赤尾木1945
電話番号
0120383088
営業時間
11:30~2:00
休日
不定休
料金
[入館料]
・大人550円 (※団体割引あり)
・子供(小・中学生)220円 ※ショッピングのみのご利用は無料
※工場見学・体験は有料 (体験の内容により料金が異なるので、公式サイトでご確認いただくか、お問い合わせください)
交通アクセス
[車] ・奄美空港から約20分
   ・名瀬から約25分  
駐車場

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