甑島 （コシキシマ）

静けさと絶景に包まれる島旅 ― 甑島の魅力

鹿児島県薩摩川内市の西方に浮かぶ**甑島（こしきしま）**は、豊かな自然と素朴な島の暮らしが今も息づく離島です。切り立つ断崖と透明度の高い海、美しい夕陽に癒やされるこの島は、喧騒から離れた「本当の旅」を味わえる場所として、多くの人に愛されています。西海岸を中心に展開する断崖絶壁の景観は圧巻で、「甑島断崖クルーズ」などのアクティビティも人気です。自然だけでなく、歴史ある武家屋敷や漁村の風景も残されており、歩いて、見て、感じて楽しめる島です。

歴史・自然・暮らしが融合する甑島ガイド

鹿児島本土から西へ約30km、東シナ海に浮かぶ甑島（こしきしま）は、上甑島・中甑島・下甑島の3つの主な島といくつかの小島から構成される島々です。2020年には橋で全島が陸続きになり、より便利に周遊できるようになりました。それでも、この島が持つ“時間が止まったような静けさ”は変わりません。観光地化が進みすぎていない、素顔のままの自然と人の暮らしが息づく場所です。

甑島を代表する風景といえば、やはり西海岸の断崖絶壁。中でも「ナポレオン岩」や「鹿の子断崖」は、自然が長い時間をかけて彫刻した芸術ともいえる存在です。これらの景色は、陸からも見えますが、ぜひ体験してほしいのが断崖クルーズ。小型船で海から見上げる断崖群は、スケールも迫力も段違い。目の前にそそり立つ岩壁、鳥の声、波の音に包まれる体験は、まさに“地球の鼓動”を感じる時間です。

島内には散策に適したスポットも多く点在します。上甑島の里町武家屋敷通りでは、江戸時代の面影を残す石垣や門構えの家々が並び、昔の暮らしを想像しながらのんびり歩けます。また、中甑島の甑ミュージアムでは、島の成り立ちや地質、動植物、歴史文化を楽しく学ぶことができ、旅の知識も深まります。

さらに、下甑島の手打（てうち）地区では、かつての城下町や港町の風情が色濃く残り、漁港と一体化した島の暮らしを感じ取ることができます。夕暮れ時、港の静けさと橙色に染まる空は、見る人の心を優しく包み込みます。

甑島のもうひとつの魅力は、“暮らしと自然の距離感”の近さです。地元の人々が守り続ける棚田、手作業で営まれる漁業、そして日々の暮らしの中にある島ならではの祭りや習慣。観光客としてではなく、“旅人”として島に溶け込むことができるのも、甑島の大きな特徴です。

食も見逃せません。新鮮な魚介類はもちろん、名物の「こしき寿司」や「飛び魚の干物」など、地元の素材を活かした素朴な味わいが魅力です。宿泊施設の中には、地元漁師から仕入れた旬の魚をふんだんに使った料理を提供する民宿もあり、島の味覚を心ゆくまで楽しめます。

アクセスは、川内港から高速船で約50分。または串木野港からフェリーでゆったり90分程度。近年は「甑大橋」の開通により、島内の移動もスムーズになり、レンタカーや電動自転車での観光も可能です。

季節ごとの表情も豊かで、春の花々、夏の海遊び、秋の夕景、冬の澄んだ空気と満天の星空と、一年を通して魅力が尽きません。観光名所を「見る」だけではなく、島の暮らしを「感じる」ことができる甑島は、まさに“心を整える旅”の目的地ともいえるでしょう。